On a hot summer day

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「わざわざすみません!こちらこそ、うちの子がぼんやりしていたんですよ。そんな若山さんに頭を下げて頂くなんて」 その母の言葉に、やっぱりかと思い、波留はもう言葉を発することもしなかった。 若山家。この島の昔からの資産家で絶大な力を持った家だ。 波留を車で跳ねたのはそこの次男坊なんだと波留は理解した。 普通にきちんと白線の中を歩いていた波留を、助手席の女の子にちょっかいを掛けていて、ハンドル操作を誤ったと後から聞いた。 自分の娘のけがを怒ってくれるのではなく、何の非もない娘が悪かったと謝罪する母を見て、波留はやりきれない思いでいっぱいだった。 唇をぎゅっと噛んで、気持ちを押し殺していると、 「向こうで座って話をした方がいいんじゃないですか?」 急に話に入った片桐に言葉に母は一瞬、片桐を睨むように見たが、父の「そうしよう」との言葉に素直にぞろぞろと部屋を出て行った。 「すごいよ!片桐君!波留のお母さんに挑むなんて」 尊敬のまなざしを向ける唯子をよそに、 「大丈夫だから」 真っすぐな視線を波留に向けると、片桐はニコリと微笑んだ。 波留自身、片桐にあの母を見られたことが少なからずショックだった。それを見越したように掛けてくれたその言葉に波留は目に涙が溜まった。 「ねえ、この海って何が採れるの?美味しいものは?」 急に話を変えてくれた優しさに波留は感謝した。
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