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「おはよう、苦しくならなかったでしょ?」
ゆっくりと目を開けた波留に、翔真は声を掛けた。
「うん、大丈夫だった。ありがとう。どれくらい寝てた?」
「2時間ぐらいかな?」
「え?!そんなに!ごめんね、片桐君!」
そんなにも眠ってしまった自分に慌てると、付き合わせてしまった片桐に申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
「大丈夫だよ、ほら結構読めた」
ニヤリと笑うと片桐はもっていた「ミステリーは突然に」という本を波留に見せると、ペラペラとページを捲った。
そんな翔真の様子に、ホッと息を吐くと波留はゆっくりと起き上がり、そっと窓の外を見た。
母の見栄なのか、波留は個室だ。
「海がみたいな」
ポツポツと見える家と緑をみながら波留は呟くように言葉を発した。
「退院したら見に行こう。それとこれ」
テーブルの上に置いてあった自分の本とは別の物を指さした。
「これは?」
何冊か重ねられていた本の一番上の物を手に取ると、波留は翔真に目を移した。
「俺のチョイスじゃいけないと思ったから、柴田さんに選んでもらった」
ペロッと舌を出して翔真はおどけたように言うと、本に目を落とした。
「唯子が選んでくれたんだ。どうりで」
波留は持っていた【恋は突然に】そう書かれた、少女漫画のような表紙を翔真に向けると、ニコリと微笑んだ。
「突然には同じだけど、全く違ったストーリーだろうね」
「そうだね」
そう言いあい二人で笑いあった。
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