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「波留!帰ろう!」
生まれた時から一緒の柴田唯子と道原京平は波留にとって、幼馴染という物に当たる人物だ。
幼稚園からこの高校までずっと一緒に育ってきたふたりとは、気心も知れていてほとんど何でも知っていると波留も思っている。
「唯子、京ちゃん」
そんなふたりに波留も笑顔を向けて手を振った。
高校から伸びる一本道を、ゆっくりといつものように京平だけ自転車を引き、波留と唯子がその横を並んで歩いていた。
高校は小高い丘の上に立っており、緩やかな坂道の下にはすぐ海が見える。
夏に向けてすこしずつ海水浴やサーフィンを楽しむ観光客が増えてきたが、まだ6月の今はゆったりとした時間が過ぎていた。
「ねえ、波留。進路は決めた?」
「え?」
唯子の声に波留は怪訝そうな表情を向けた。
「だから、高校卒業したらこの島にはいられないでしょ?早めにやりたい事見つけた方がいいってみんな言っているわよ」
「そうなの?」
波留はそう言うと、少し後ろを歩いていた京平を見た。
「まあ、そうだな。もう2年だし、就職か受験かぐらいは決める時期だろ?」
「そっか……」
うーん、と腕を組んで考えるふりをした波留に、
「ふりは止めなさい」
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