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ビシっと唯子に言われ、波留は苦笑いをした。
「でも、来年は3年だし本当にいろいろ大変な時期だと思うし、今年最後じゃないの?思い切り遊べる夏は」
キラキラした瞳をふたりに向けた波留に、「まあ、それでこそ波留か……」そう言って3人は夢いっぱいの夏を語った。
「なあ、そう言えば、噂聞いたか?」
「噂?」
二人で声が揃って波留と唯子は顔を見合わせてクスクスと笑った。
「転校生が来るらしいぞ」
「へえ、こんな変な時期に、こんな何もないところへ?」
唯子が興味津々と言った様子で、京平を見た。
「ああ、俺もそう思ったんだけど、昨日親父がお袋と話してるの聞いたからまず間違いなんじゃないかな」
京平の父親はこの町の役場で働いており、福祉や教育といった部署を担当している。
「へえ、でも引っ越しなんてあった?」
波留の問いに、
「いや、片桐のばあちゃんの所って言ってた」
「片桐のおばあちゃんの所?」
唯子の問いはもっともで、水野のおばあちゃんと言うのは、海の近くに一軒だけ立つ大きな平屋の家で一人暮らしをしている時期に70になろうという島のおばあちゃんだ。
「ああ、なんでも東京から孫が来るみたいだぞ」
「ふーん。東京か……都会から来るんだね」
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