その部屋、結構訳あり八畳間 その2 ~その味わい~

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その部屋、結構訳あり八畳間 その2 ~その味わい~

俺は、どんな小さなことも引き受ける町の便利屋をやっている。 社交的じゃなかった俺は、所謂集団行動が苦手だった。 だから、自分で勝負しようとこの職業を選んだ。 しかし実際に始めてみると『色んな人と交流して打ち解ける必要がある』という現実を突きつけられた、当然のことなのだが。 それでも続けて来られたのは、高校の後輩でもある部下の慎也の存在が大きい。 最初の頃は少ししか給料を払えないのにも関わらず、ついてきてくれた。 今では俺も慎也も生活に困らないようになったが、金銭面に余裕があるわけではない。 そのため、学生の頃から今もなお住まいは間借りで、事務所も兼ねている。 そこは昭和の香りが漂う一軒家。 家の外構は石積みの上に金属柵の囲い。 石の門柱にライオンの顔が持ち手の門扉。 門扉と玄関の間には先代から受け継いでいる様々な木や花が植えられている。 少しずつ色んな種類という印象だ。 ガラスの引き戸を開けると三和土の玄関。 右手に階段があり、そこを上がって手前の部屋に俺は住んでいる。 すりガラスの障子戸の中は、ゆったりとした八畳の和室。 押入れの襖は、昔ながらの海岸に松林。 テレビとエアコン、パソコンは自分で買ったものだ。 振り子時計に黒電話、重厚感のある座卓、そして熊の木彫りは備え付け。 隣の部屋とは襖で仕切られただけだが、慎也が借りているので今のところ困ってはいない。 俺はそんな八畳間で、便利屋として働き、そして暮らしている。
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