擬態狩り

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「お断りします。強制力はないですよね」  本条学の意思ではなく『僕』はそれをチラッと見てそう言ったが、ロシアンブルーは上からジーッと見下ろし、体格のいい男も中年男も睨んだ。 「擬態だよね?霊能ゲームって知ってるでしょ」 「知りません」  そう言いながらも『僕』の視界は黄色いレンズを透したように、薄っすらと黄色がかって見えている。 「受け答えが早いわね」 「知ってると言えば、連行される口実にされますから」 「さすが東大の学生さん。でも、それなら霊能ゲームが危険なことも知ってるよね?」 「だから、知らないって言ってるでしょ。警察に通報しましょうか?」  声を張り上げて、『僕』は携帯電話をかける素振りをし、周辺の乗客に注目させ騒ぎ立てた。特能チームは正式に認可されてないので公にはされたくない筈だ。 「リカコ。また、ボスに怒られるぜ」  体格のいい男がそう忠告し、小柄の中年男がショルダーバッグから電子フルートのような楽器を出し、「試してみますか?」とロシアンブルーに聞く。
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