電子フルート

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電子フルート

 正直な所、『僕』はそれを見て正直焦り、かなりヤバイと思ったが、もちろん表情には出してない。 『噂には聞いていたが、こいつがハーメルンの笛吹き男か?体格のいい男は大沢春人。通称・ハルク。パワーはあるが、筋肉バカなのでそれほど脅威ではない』 「新型の発見器か?」 「ええ、鼠の正体が視えるはずです」 「やめろ。警察を呼ぶ」  二人の会話を聞いて、『僕』は本当に電話したが、ハーメルンの笛吹き男は意に介さず、ヘッドホンをしてフルートのような発見器を演奏する。 「電車内で暴漢に襲われています。乗客が危険だ。至急、電車を止めて……」  電磁パルスの高音域の音が鳴って耳にキーンと響き、鼓膜がムズムズして脳への神経回路に毛虫が走っている感じ。 『肌も鳥肌が立ち、ヒリヒリした』  霊エネルギーとして、この身体に存在する『僕』は不快感で震え、脳細胞に張り付いた霊電子は乱れ剥がれそうになった。  そして本条学の身体は痺れ、頭部は項垂れたが、『僕』はそれに反してハーメルンの笛吹き男を見上げ、霊エネルギーが幻影化して僅かに浮き上がり二重にダブって顕在化する。 「擬態が視えたぞ。確保だ」
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