第二章 『思い出には、目を伏せて』

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 スーパーまで徒歩数分、自転車を止めると、一旦荷台からバッグを下して一緒に中に入る。  どうやら、環菜先輩はケチャップと玉ねぎを買いに来たらしく、一つずつ手に取るとすぐにレジへ向かった。 「今日、オムライスなんですか?」 「そう、オムライス。梓君は何も買わないの?」 「別に大丈夫です、一緒に来たかっただけなんで」  会いたいな、話したいな、と思っていても、買い物はあっけなく終わってしまい、お店を出た駐車場で、じゃあ、と手を振られた。  しかし、満たされず腕を握ると、環菜先輩は振り返って、俺を見ない。
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