第二章 『思い出には、目を伏せて』

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 もう、遅いのは分かっている。  でも、再会した今、引き留められずにはいられない。 「俺は今でも、環菜先輩のことが引っかかってて、気にしてますよ」  この気持ちを、いずれは恋だというのかもしれない。 「宿泊訓練行ってる時も、よく考えてました」  無言の環菜先輩は、俺と目を合わせたまま、固まっている。  俺は両手を伸ばすと、環菜先輩の頬を包み込んで、一呼吸おいて。 「俺のこと、また見て下さい」 「……梓君」 「もう一度、環菜先輩と、友達でいいから始めたい」  見つめると、徐々に顔が赤みを帯びて、環菜先輩は俺の手をのけて立ち上がった。
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