第二章 『思い出には、目を伏せて』

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「……帰ろうか」 「環菜先輩、耳まで真っ赤ですよ」 「知らない」 「待って、送ります」  嫌な顔をされても、思っていることは全て伝えられて、ひとまずホッとする。  しかし、環菜先輩は思い出には目を伏せて、自分から話を掘り下げることはなかった。 「会いたかった」  小さな背中に言うと、環菜先輩は両手で耳を塞いで、小走りで公園を出て行く。  可愛いな、と思いながら、俺もすぐに自転車を押して追いかけた。
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