エピローグ

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 黒い高級車が、隼人の家の前に停まっていた。杉里は藪の中に身を潜め、様子をうかがった。  誰だ? 警察、ではなさそうだ。  暗くてよく見えないが、二人いる。一人はボンネットに腰を下ろし、煙草を吸っていた。もう一人は家の焼け跡に身をかがめ、何かを探しているようだった。  ガリ、ガリ、と土を削る音。地面を掘っている、と杉里は気づいた。隣で犬のジーザスが、低いうなり声をあげた。首根っこをつかんでシッとやると、ジーザスは小さく鼻を鳴らし、その場で伏せをした。 「まだか?」  ボンネットの男が訊いた。 「ん、深く埋めたから、もうちょっと」  土をほじくる男が答えた。耳を、疑う。まさか、と腰が跳ねた。 「それ、本当にいるか?」 「いるよ」  杉里は無意識に立ち上がっていた。  隼人だ。  藪の中から飛び出して、叫ぶ。 「隼人!」  ボンネットの男は驚いた素振りを見せず、冷静に煙草の煙を吐き出した。地面を掘っていたもう一人の人影が、腰を上げる。手に、何かを持っている。土にまみれた、サッカーボールにも見えた。後部座席のドアを開け、それを丁寧にシートに置き、「杉里」と手を払いながら答えた。  杉里は、隼人に駆け寄った。ところが犬がブレーキを踏み、近寄ろうとしない。低くうなり続けている。 「ジーザス、どうした、隼人だぞ」     
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