第一章 日常

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 さて、残りの女子は、運動部の子が無理矢理引っ張り出されて試合開始。  相手チームの先攻で、ピッチャーの立ち上がりを突かれて4失点。  その裏、私たちの攻撃。一番バッターは頼み込んで私にしてもらった。  その私のセンター前ヒットを皮切りに、2アウト満塁まで攻め立てたんだけど、あとが 続かずに無得点。  その後、3回表まで終了して0-4で4点のビハインド。  3回裏に2点返したところで、相手ピッチャーがソフト部の高橋さんに交替。 「ズルイよー」の大合唱になったけど、簡単にアウトを取られ、2アウト二塁三塁 になったのが冒頭のシーン。  ここで、また一番バッターの私に打順が回ってきた。  私が勇んでバッターボックスに入ると、審判役の先生が 「はい。それじゃ、授業終了時間だから、この回で終わりね」 と宣言した。  一打同点、ホームランなら逆転サヨナラの場面が出来ちゃった。 「そいつ、ヒット2本打ってっぞ。気ぃつけろ」  相手チームの内野が声を上げる。  失礼ね。『そいつ』じゃなくて、芽菜(メナ)っていう格好可愛い名前があるんだから。 と声の主を睨み付ける。  プレイ再開、初球はのけ反る程の内角高めのストレート。高橋さん本気だ。  2球目は外角低めのストレート。またも手が出せない。  「タイム」  バッターボックスを外し、バットの握りを確かめつつ、なけなしの頭で考える。  現役ソフト部の高橋さん VS 帰宅部の私。  こりゃ、三球三振取りに来るよね。それに、ソフト部の意地もあるから……。  そう読んで、私はストレート狙いでバッターボックスに入りなおす。
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