第七章 異変

10/10
111人が本棚に入れています
本棚に追加
/194ページ
 その日、茉菜と別れて家に帰る途中、私の頭に素晴らしいアイデアが閃いた。  ソフトの練習試合は私の世界では明日の日曜に行われる。茉菜の世界の練習試合は私に とっては明後日の出来事だ。  今までの経験からみて、茉菜と私の世界で発生する現象は細かい違いはあるけれど大体 同じ。だから、きっと試合で投げるピッチャーの配球も同じ筈。なら、明日の試合を見て ピッチャーの配球を全部覚えておけば、明後日の試合は簡単にヒットが打てるじゃん。  我ながら何て素晴らしいアイデアだろう。でも、こんなこと茉菜に言ったら反対するに 決まってるので、黙っておくことにしよう。  でも、明日の日曜はバンドメンバーが集まる約束になっている。  隣町の地域振興イベントで、アマチュアバンドのライブ大会があるから、それを聞きにいこうという話だ。曲の演奏順とかアレンジとかを実際に見てみるのが目的。  どうしよう。ライブ見学も大事だけど、このアイデアも捨てがたい。困った…。  悩んだ挙句、ライブの方は休むことに決めた。だって、バンドの事は他の日でも出来る けど、試合の方は明日しかチャンスが無いんだもの。  そう決めて由美に電話をした。  由美は残念そうだったが、私を除く三人で行ってもらうことに決まった。  時間のズレという非常事態を前にしても、気楽な私の胸の中には、入れ替わりのソフト の試合に対する夢が、段々と膨らんでいった。  
/194ページ

最初のコメントを投稿しよう!