第八章 すれ違い

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 翌日。三連休の真ん中の日曜日。私の世界でのソフトボールの試合の日。  私は配球トレース作戦のために勇んで学校に向かった。  9時15分前にグランドに着くと、ソフト部員がグランド整備中。  ここで今更ながら、ある疑問に気が付いた。茉菜世界では私が助っ人をやってるけど、 こっちの世界では誰が助っ人やってるんだろ。  練習試合が組まれたからにはメンバーは9人揃ってる筈。  そう思って、選手を一人一人確かめると。  居た、手首に包帯を巻いた子が。  たしか茉菜世界ではジャージ姿で試合をサポートしてくれてた子だ。  何だ、出れるんじゃん。  件の子の守備位置は外野らしく、練習が始まると外野のノックに加わっていた。  この子、捕球の方は危なげなくこなしてるけれど、送球の方は頼りない。ボールの飛ぶ 方向と距離がバラバラ。手首の怪我の影響か、それとも練習不足だろうか。  そこに対戦相手の高校がチームバスでやってきた。知ってる校名だ、この高校もわりと 強豪校。  どうやら、今回の相手も二軍か三軍らしい。うちのソフト部は弱小なので一軍は相手に してくれないのだろう。それに一軍相手だったら、こっちから出向いて行くのが筋という 位の実力差だ。  さて、ピッチャーの配球が見やすい位置を探して、自軍ベンチ後方の応援席に目立たぬ ように陣取ることにした。  茉菜世界では、私はさっきの怪我の子の代理。だから、今この世界で行われる試合は、 あの子に関係するプレイだけをトレースしておけば良い筈よね。
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