ふたりの。

プロローグ

　これから書き綴るのは、私が１７歳のこの夏に経験した不思議な出会いの物語。
　『不思議な』と表現してはみたけれど、私と同じくらいの歳の子なら、こんな出来事の
一つや二つ、見聞きしているのではないかと思っている。
　だけど、皆その事を忘れちゃうんだ、いつか。
　私だって、大人になって常識や理屈が頭の中で幅を利かせるようになったら、この夏の
出来事も、単なる夢物語として思い出すようになるかもしれない。

　だから、
　私は事の成り行きを、この物語として書き残すことにした。
　あなたの思い出を、心に深く刻みつけるために。
　私たちの過ごした夏を、永遠のものにするために。

　銀河の終章まで尋ねても、出会う筈のなかった、私たち。
　時の果てる場所まで探しても、触れ合う筈のなかった、あなたと私。
　自分を一番理解しているのは、私自身だとばかり思っていた。

　私は忘れない。１７歳のこの夏を。
　もう繰り返される事のない、
　何よりも大切な、
　私たち、
　ふたりの。