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ところで、何で時間のズレが起きたのだろう。
この疑問に対して、茉菜は彼女なりの答えを考えていた。
「それは、お互いの歴史が書き換わったからだと思う。そのせいでオバケ鏡の繋がる先の時間がズレてしまったんじゃないかな」
「歴史が書き換わった?」
「そう……、それは多分、私たちの入れ替わりのせいだと思う……」
茉菜が沈んだ口調で言葉を続けた。
「どういうこと」
「そうね…。例えば、前に芽菜と私が入れ替わって、外国人の道案内をしたことがあった
でしょ。もしも、入れ替わりが無かったら、あの人は別な人に道案内をして貰って、その
人と親しくなってたかもしれない。でも、入れ替わりがあったので、その出会いはない、
その歴史は無かったことになってる」
「えー! でも私、親切心からやったんだよ」
と抗議すると、
「分かってる。でも、これは良いとか悪いとかの話じゃないの。入れ替わりで歴史が書き
変わる。そこが問題」
「そんな……」
「それに影響は入れ替わりだけじゃない。調理実習や化学実験での失敗を、お互いに連絡
しあうことで未然に防いだでしょ。これも、歴史を書き換えてることになる」
「うーむ」
「きっとね。私たちにとっては些細な違いに思えることでも、小さな物事の違いが複雑に
影響しあって、大きな違いに成っていくんだと思う」
なんか、茉菜の話を聞いてると八方ふさがりだ。
「それじゃ、これからどうすれば……」
と茉菜に問うと、
「当面、入れ替わりは止めたほうがいいと思う。それで様子を見ましょう」
と予想通りの答えが返ってきた。
「うーん。それしかないか…」
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