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「美玖、僕は君のことが好きだ!付き合って欲しい」
美玖は僕から目を逸らし歌碑に目を向けてしばらく黙った後答えた。
「住吉の 粉浜のしじみ 開けも見ず 隠こもりてのみや 恋ひわたりなむ・・・・この歌を私が呟いたのを秋信がスマホで検索したのが二人の出会いだったと思っているでしょ?」
「ああ、思ってる」
「違うよ。私は・・・・ずっと南海電鉄に乗る私とは違う高校に通う秋信のことを見ていたんだよ」
「じゃあ・・・・・・・・・美玖の片想いの相手って」
「あの・・・相聞歌は恋に向けての訓練なんかではなかった。そう、あなたに送った率直な思いだったの・・・・」
鈍感な僕は一切気付かなかった・・・。
「じゃあ、僕が片想いの相手がいると知ると分かって・・・」
涙目で頷く美玖。
僕は正直に答えた。
「実は、美玖が綺麗だったから友達になりたくて、美玖に共感して貰う為に片想いの相手がいると嘘を吐きました・・・ゴメンナサイ」
美玖は今日、初めてニッコリと笑って答えた。
「でも・・・嬉しい!私の叶わないと思った恋が叶ったから」
「じゃあ・・・返事は」
美玖はこちらが恥ずかしくなる様な大きな声で答えた。
「OKです!」
と。
◆
そしてその帰り道、さよならをした後、僕らは次こそ本当の意味での相聞歌をメールで送りあった。
南海電鉄に揺られる僕のメールに美玖から届いた歌。
明日からの 南海電鉄 君の横 予約しました その指定席
僕はクスッと笑って返信した。
降りる駅 忘れるぐらい 君の傍 そういつまでも 寄り添いたくて
これからも僕らの相聞歌は続いて行く。
そう南海電鉄に揺られながらいつまでも。
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