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すると少女は照れ臭そうに言った。
「私達互いに想い人がいるんですね。じゃあ・・・相聞歌の遣り取りをしましょうか?」
「えっ?何に沿わないんです?」
少女が不思議そうな顔つきをする。
「えっ?何に沿わない?もしかして相聞歌を【沿うもんか!】と解釈していませんか?えっと・・・さっき和歌に詳しいと・・・・」
僕は顔を真っ赤にしてしどろもどろに答えた。
「そう、そう、あっ、えっと・・・」
すると少女はクスリと笑って言った。
「いいですよ。友達になろうって誘ったのこちらからでしたし。知ったかぶりをしなくていいです!相聞歌とは想い人同士がその恋心を和歌にしたためて贈り合うのです」
なる程、そう言う事か。
「でも・・・ちょっとそれじゃあ変じゃないですか?僕らは想い人同士ではないので相聞歌を贈り合う意味がないじゃないですか?」
少女は視線を僕から外して窓の外の流れる景色を見ながら言った。
「私、片想いの人がいるの。でも極度の内気でその気持ちをストレートに伝える事が出来ないの。だから、相聞歌を通して告白の訓練をしたいのよ」
正直邪魔くさそうな提案だったが、少女が困っているのを友達となったからには見捨てて置く訳にはゆかなかった。
「相聞歌か。昔の人は風流な事をしていたもんですね。いいですよ!やりましょうか!」
すると少女はチラッとこちらを見て言った。
「あなたも片想いの相手がいるのよね。いつか恋心を打ち明けるんでしょ?いい訓練になるんじゃない?」
片想いの相手がいると言うのは咄嗟に言い繕った嘘だった。
だが今更嘘ですとは言い難かった。
そう片想いの相手がいると共感された為にこんな可愛い少女と友達になる事が出来たのだ。
それを嘘と言えば友達である事を止められてしまうかも知れない。
僕は嘘を吐く気持ちに嫌気がさしながらも嘘を言った。
「そうなんです。僕にも片想いの相手がいまして。きっといつか思いを打ち明ける訓練になると思います。正直和歌はハードルが高いんですが」
少女がクスリと可愛らしいリスの様に笑って言った。
「和歌ではなく、短歌でしましょう。現代風の相聞歌です」
そして僕らはメールアドレスを遣り取りをしたのだった。
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