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◆
僕が美玖の前で奈緒と再会した日から、ピタリと美玖からの相聞歌は途絶えた。
僕は美玖が心配になり何度もメールを送った。
だが美玖は返信して来なかった。
僕はと言うと正直不思議な気持に囚われていた。
奈緒は昔、僕の片想いの相手だったがただの片想いの相手ではなく初恋の人だったのだ。
そんな奈緒との思いも掛けぬ再会。
正直、嬉しかった。
初恋の人に相応しい美しさで、性格も明るく、既に学校の人気者になりつつあった。
そして奈緒は事あるごとにクラスは違えど僕の教室にやって来て僕に話し掛け僕はクラスメイトに羨ましがられた。
これは僕の、まあ根拠の無い勘だったが、もしかすると奈緒は僕にまんざらな気持ちではなかった様だった。
美玖との相聞歌を僕は思い出していた。
ただ見てる だけの恋から 後一歩 進めば変わる 明々後日の君
そう、もし僕が奈緒に後一歩、歩み寄れば、もしかすると・・・僕の恋は、そうあの頃の片想いは叶うかも知れなかった。
だが・・・奇妙なのは、美玖の面影だった。
奈緒に告白しようかと思った瞬間美玖の顔が脳裏にチラつくのである。
美玖はただの友達だ。
美玖は可愛い女の子だったが僕は正直恋の対象とは見ていなかった。
だが・・・何を僕は迷っているのか?
そんなある日の事だった。
奈緒に放課後、体育館裏に僕は呼び出されたのである。
僕は焦った。
これはやっぱり告白ではなかろうか?
だが僕の中で奈緒の方に踏み込めない、そう美玖への思いをきちんと整理する時間が欲しかった。
僕はじくじくと情けなくずっと逡巡していた。
だが答えを今日出さなければならない様だった。
体育館裏で奈緒と向き合った。
奈緒はストレートに告白して来た。
「実は引っ越しする前から秋信の事が好きだったの。子供だった私はその思いをどう伝えればいいか分からなかった。だけれど今なら伝える事が出来ます。秋信、私と付き合って頂けませんか?」
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