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僕は一度深く目を瞑った。
自分の気持ちに正直に向き合わなくてはならなかった。
奈緒と美玖。
僕の中で美玖が奈緒に並ぶ程、大きな存在になっていたのは僕にとっても意想外の出来事だった。
『僕は美玖の事が好きなのだろうか?ただ変に美玖に同情しているだけではないのだろうか?』
そう恋にピュアに苦しみ、恋に真摯に向き合う美玖の姿に僕はいつの間にか魅かれていたみたいだった。
だが当然、美玖には片想いの想い人がいる事も重々承知していた。
そうだから美玖を選んだとして僕の恋に勝算があるとは思えなかった。
美玖の心をその想い人から僕に振り向けなければならない。
その恋は失敗するかも知れない。
だが・・・今、僕の前に差し出された恋は100%成功する恋だった。
OKの返事さえ出せば100%奈緒とはお付き合い出来るのだ。
0%の可能性がある恋か100%の成功が保証されている恋か?
僕は逡巡を断ち切った。
もう既に答えは出ていた。
「奈緒・・・・ゴメン。実は好きな人がいるんだ」
奈緒の瞳からポロリと涙が零れ落ちたのだった。
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