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「私にもあんな風に、連れ出してくれる人が現れないかなぁ」
おうおう、それは何かい?
遠回しに「どこか遠くに連れてって」と言いたいのか?
まさか1日でここまで親密になれるとは、デートってすげぇな。
引き立て役のスミレさんにも感謝だ。
それからのオレはちょっと上の空だった。
今度の休みにどこへ誘うか、とか。
次こそは邪魔の入らない所がいいな、とか。
そんな事ばかりを考えていた。
これで初彼女へリーチしたかもしれない。
今後の生活にも張りが出るってもんだ。
オレは未来の甘い生活を妄想しつつ、眠りに就いた。
そして深夜。
寝冷えのためか、2時頃に目が覚めた。
春の夜はまだまだ寒い。
起きたついでにトイレへと向かった。
用を足して眠りに戻ろうとしたところ、台所から物音がした。
明かりはついていない。
物音がした後も、かすかに人の気配がする。
どうやら気のせいではないらしい。
こんな深夜に誰が?
アヤメだったら、電気くらい点けるだろう。
お節介半分に松崎さんが……ってのもあり得ないか。
ということは、泥棒?!
いやいや、まさか。
こんな長閑(のどか)な田舎に泥棒なんて居るわけ無い。
念のためモップを片手に持ち、台所のスイッチに手を伸ばした。
ーーパチリ。
急激な明暗の差に、目がツキリと痛む。
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