第12話  アヤメの想い

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それは相手も同じだったようで、オレと同じような姿勢になった。 問題のその人物はというと……。 「アヤメ、こんな夜中に何やってんだ?」 シンクの傍でアヤメが所在無さげに突っ立っていた。 泥棒じゃなかった。 これでひと安心だが、疑問は形を変えて再度浮かび上がる。 深夜に独り、暗がりで何をしていたのか、ということだ。 「ごめんね。起こしちゃったかな」 その声は少し弱々しい。 その両目も赤く染まっている。 オレはモップを投げ捨てて歩み寄った。 「どうした、何かあったのか?!」 「ううん。何かあった訳じゃないの。ただ……」 「ただ?」 「あの女の子が、羨ましくって」 「それって、どういう事?」 立ち話で気軽に聞けるような話じゃないようだから、テーブルに着くよう促した。 アヤメはゆっくりと椅子に座り、静かに項垂れた。 オレはその姿を視界に収めつつ、向かい合うようにして座る。 ギシリと鳴る椅子の音が、酷く煩わしく感じられた。 「前に話したかもしれないけど、私も転生者なんだ」 ポツリ、ポツリと言葉が紡がれていく。 一語一語確認するかのように静かに、そして丁寧に。 「私の死因は事故死らしいの。卒業旅行中での事なんだけどさ。ツイてないよね」 「かなり前に聴いたと思う。それで?」     
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