第12話  アヤメの想い

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それをゆっくりと包みこみ、グッと力をいれた。 オレの意思を少しでも多く伝えるために。 「ここから抜け出そう。イバラキから脱出しよう!」 「でも、それは私も試したよ。結果はこの通りだけど……」 「それは1人でか? それとも何人も連れて試したのか?」 「えっと、私だけ……だったよ」 「じゃあ試してみる価値はある。1人では無理でも、2人なら大丈夫かもしれない」 自信たっぷりに言ったが、根拠は何一つ無い。 でもほんの少しでも可能性があるなら、それに賭けるべきだろう。 転生者2人で挑めば、何かしらのキッカケが掴めるかもしれない。 その可否を知るには、実際に試してみるしか無い。 「……わかった。やってみよう」 「よし、決行は今日。夜が明けてからだな」 「随分と急だね。もしかして、せっかち?」 「目の前で泣かれちゃあな。すぐにでも解決したくなるだろうよ」 「そう……。ダイチくんは優しい人だもんね」 そう言ってアヤメは笑った。 その笑みに、ようやくオレも心が和らぐ。 それでも本当に見たいのは、別のものだ。 涙の跡のない、純粋な笑顔。 それを見るまで諦める事は無いだろう。 それからオレたちは眠りにつき、朝を迎えた。 午前8時。 農作業には遅い時間だろうが、出立するには程よい頃合いだ。     
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