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この時間なら電車も走っている。
とにかく行けるところまでは交通網を利用したい。
「アヤメ、準備はいいか?」
「お金に、最低限の荷物。大丈夫だよ!」
「よし、行くぞ!」
玄関を勢いよく開けた。
これから先の困難に立ち向かうようにして。
天気が良いからか、日差しが強い。
逆光気味の太陽に目を細めた。
そしてその光を背負って、スミレが立っていた。
リュックサック付きで。
「遅かったですね。早く出ましょう」
こいつ何言ってんだ?!
その荷物はなんだ、なんでオレたちの動きがわかる、つうか学校行けよ。
「早く出ましょうって、お前は何を言ってんだ?」
「とぼけないでください、虫さん。イバラキから出ていくつもりでしょう?」
「……どうしてそれを?」
「魔術を前にして、隠し事など不可能ですよ」
魔術だと!?
それを聞いてオレはドキリとする。
腹の奥底を見透かされたような気分だ。
「この世界から出たいなら、私を連れていくべきです。この知識が必ず役立ちますよ」
転生前のオレであれば、大笑いしてる場面だ。
『魔術とか、コイツ何言ってんだよ!』なんて口にしながら、腹を抱えて笑っただろう。
でも今は、その胡散臭い言葉がとても心強かった。
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