第12話  アヤメの想い

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この時間なら電車も走っている。 とにかく行けるところまでは交通網を利用したい。 「アヤメ、準備はいいか?」 「お金に、最低限の荷物。大丈夫だよ!」 「よし、行くぞ!」 玄関を勢いよく開けた。 これから先の困難に立ち向かうようにして。 天気が良いからか、日差しが強い。 逆光気味の太陽に目を細めた。 そしてその光を背負って、スミレが立っていた。 リュックサック付きで。 「遅かったですね。早く出ましょう」 こいつ何言ってんだ?! その荷物はなんだ、なんでオレたちの動きがわかる、つうか学校行けよ。 「早く出ましょうって、お前は何を言ってんだ?」 「とぼけないでください、虫さん。イバラキから出ていくつもりでしょう?」 「……どうしてそれを?」 「魔術を前にして、隠し事など不可能ですよ」 魔術だと!? それを聞いてオレはドキリとする。 腹の奥底を見透かされたような気分だ。 「この世界から出たいなら、私を連れていくべきです。この知識が必ず役立ちますよ」 転生前のオレであれば、大笑いしてる場面だ。 『魔術とか、コイツ何言ってんだよ!』なんて口にしながら、腹を抱えて笑っただろう。 でも今は、その胡散臭い言葉がとても心強かった。
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