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引き返すつもりは無いが、少し考えが足りなかったかもしれない。
「次はぁー終点、トリデです」
「そろそろ着く……のよね」
「そうですね。もう片付けましょうか」
好き放題に散らかしたお菓子の袋やらをしまい始めた。
緊張を和らげるためにも何か貰えば良かったな。
空いた袋を丸めつつ、少しだけ後悔した。
「終点ー、トリデです。これ以上はご乗車いただけません」
無抑揚なアナウンスを聞きつつ、電車から降りた。
他の乗客も全員が降りたようだ。
皆当然のように、ここが終点であることを受け入れている。
この先にも世界が広がっていることを知らないようだ。
「じゃあ、行くか!」
「そうね。行ってみましょう」
オレたちは改札を勇み足で通りすぎた。
イバラキの県境を越えられると信じて。
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