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第14話 渡河作戦
改札の先に広がる光景はというと、よくある地方都市と言ったところだ。
特にファンタジーな雰囲気や、魔術の禍々しさのようなものは一切無い。
遠くの空には筑波山がそびえ、その反対側には大きな川が流れていた。
県境でもある、利根川だ。
そこを越えることができれば、晴れて異世界脱出となる。
問題はその川をどうやって渡るか、だった。
「バスはもちろん、周回すらしてないな」
「ダメもとでタクシーに乗ってみない? 乗用車だったら向こう側に行きやすいのかも」
「そこにちょうど止まってるな。乗せてもらおうか」
駅前ロータリーだからか、いくつもの客待ちタクシーが連なっていたので、そこの先頭車輌に乗り込んだ。
「あい、おたくらどこまで?」
「天王台に行きたいんですけど……」
「てん、なんだって?」
「天王台です、隣街の」
「ちょっと待っててくれるけ? 今ナビで検索すっから」
運転手がポチポチとカーナビを操作する。
だが、検索結果には全く出てこない。
道も知らないようだし、これは乗せてもらえないかもしれないな。
「出てこないねぇ。記憶違いじゃねぇのかい?」
「そう、かもしれません。ちょっと出直してきますね」
「はいよ、また来てな」
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