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バスもタクシーもダメとなると、徒歩で行くしかない。
幸い橋までは遠くないので、距離に問題はない。
その橋を無事に渡りきれるかはわからないが。
「ここで話してても仕方ない。まずは向かってみよう」
「そうだね、他に手段もないもんね」
緊張のためか、不安のせいか、口数がみるみる減っていく。
オレは元気づけるように話題を振り撒いていった。
「アヤメは向こうに行ったら、最初になにがしたい?」
「やっぱり、実家にもどりたいなぁ。今の私じゃ気づいてもらえないだろうけど」
「どうして?」
「転生前と今とじゃ、見た目が全然違うから」
「ええッ? そうなの?」
転生すると容姿が変わるのか?
初耳だぞ。
「ダイチくんだってそうでしょ。違うの?」
「オレは全く変わってないぞ。せいぜい髪が伸びたくらいだ」
「そうなんだ。他のケースなんて知らないけど、もしかして私の方が珍しいのかな?」
「わからん。けど見た目が変えられるなら、オレは一新したかったよ。頭から爪先までみっちりとな」
「えー? ダイチくん、別に外見悪くないじゃん。気に入ってないの?」
その言葉は嬉しいが、質問の答えはイエスだ。
没個性な顔立ち、高くも低くもない背丈、日に焼けない青白い肌、胴と比べて妙に短い足。
コンプレックスてんこ盛りだ。
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