第14話  渡河作戦

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テレビでフランスやイタリアの中継がされると、彼らが羨ましくて仕方なくなる。 あんな風に生まれ変われたらどんなに嬉しいか。 そう考えたのは一度や二度じゃない。 「スミレ、この話について見解は?」 「さぁ、どうなんでしょう。でも推測をするとしたら……」 「するとしたら?」 「転生したキッカケによるのでは? 経緯で結果が分かれるとか」 「あぁ、うん。きっとそうだな。はい、この話はおしまいぃー」 物凄く心当たりがある。 アヤメは事故で、オレはヤケ酒だ。 彼女のは避けようのない不運だが、オレの場合はただの自業自得と言える。 その結果、新たな人生にギフトの有る無しが区別されたのかもしれないな。 アヤメはちょっと不完全燃焼みたいな表情だ。 もしかすると話し足りないのかもしれない。 ともかく、早いところ話題を切り替えよう。 女にフラれたヤケ酒で死んだ、なんて知られたくはない。 「アヤメが前に境界を抜けようとしたとき、どんな事が起きたんだ?」 「あの時も確か、橋を渡ろうとしたの。利根川が県境だって知ってたから。それで途中までは問題無かったんだけど」 「うんうん」 「急に濃い霧が出てね。それで右往左往して……そこからは覚えてないの」 「覚えてないって、全然?」     
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