69人が本棚に入れています
本棚に追加
テレビでフランスやイタリアの中継がされると、彼らが羨ましくて仕方なくなる。
あんな風に生まれ変われたらどんなに嬉しいか。
そう考えたのは一度や二度じゃない。
「スミレ、この話について見解は?」
「さぁ、どうなんでしょう。でも推測をするとしたら……」
「するとしたら?」
「転生したキッカケによるのでは? 経緯で結果が分かれるとか」
「あぁ、うん。きっとそうだな。はい、この話はおしまいぃー」
物凄く心当たりがある。
アヤメは事故で、オレはヤケ酒だ。
彼女のは避けようのない不運だが、オレの場合はただの自業自得と言える。
その結果、新たな人生にギフトの有る無しが区別されたのかもしれないな。
アヤメはちょっと不完全燃焼みたいな表情だ。
もしかすると話し足りないのかもしれない。
ともかく、早いところ話題を切り替えよう。
女にフラれたヤケ酒で死んだ、なんて知られたくはない。
「アヤメが前に境界を抜けようとしたとき、どんな事が起きたんだ?」
「あの時も確か、橋を渡ろうとしたの。利根川が県境だって知ってたから。それで途中までは問題無かったんだけど」
「うんうん」
「急に濃い霧が出てね。それで右往左往して……そこからは覚えてないの」
「覚えてないって、全然?」
最初のコメントを投稿しよう!