69人が本棚に入れています
本棚に追加
「そう。気がついたら家の前に居たんだ……。ごめんね、参考にならなくて」
「いやいや、そんな事無いぞ!」
「そうですよ。情報量ゼロの虫さんと違って、とても有益な話でしたよ」
スミレのちょいイラ発言はさておき、確かに聞くべき点はいくつかあった。
霧が出る事。
記憶が抜け落ちる事。
家に戻らされる事。
危険なワナや敵性生物が待ち受けていない事。
今の会話でこれだけの情報が手に入ったのだから、大収穫だったと言える。
「橋に……着いたわね」
「霧がもう出てますよ。向こう岸が見えません」
なんだか妙じゃないか?
アスファルトがまるで、宙に浮いているだけのように見える。
何と言うか、こちら側の土地を上部だけ引き伸ばしたような。
まぁ、川の流れる音が足元の方から聞こえるんだ。
濃霧のせいで細部までは見えないが、これは橋に間違いないのだろう。
「はぐれないように、手を繋いで行かないか?」
「こんな時ですら女の肌に触れていたい、と。虫さんは途方もない変態さんですね」
「スミレちゃん、これは魔術対策だよ。そうでしょ?」
「まぁ、全然気づきませんでした!」
芝居が白々しい。
お前は1度『ほぅ』という顔をしてただろ。
オーバーリアクションで迎え撃つのやめろ。
最初のコメントを投稿しよう!