第14話  渡河作戦

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オレの心はあっという間に、恐怖へと塗り固められてしまう。 境界脱出なんかより、人の居る場所へと戻りたくなった。 せめて、手がかりだ。 些細なもので良いから道標がほしい。 望みようの無い願いを抱えていたところに……。 ーーコツリ。 少し離れた場所で微かな物音がした。 あれは恐らく、靴の音だろう。 「アヤメ? それともスミレなのか?!」 ーーコツリ、コツリ、コツリ。 足音が徐々に遠ざかっていく。 もう知らない誰かでもいい。 この際、相手が極悪人だって構わない。 独りきりよりはずっとマシだ。 「待って、置いていかないでくれ!」 もう足元を気にしている余裕はない。 全力失踪で音の方へと駆け出した。 足にはそれなりに自信があるから、すぐに追い付けるだろう。 そう思ってはいたのだが。 「ハァ、ハァ。なんで距離が……」 足音は一定の距離感を保ったままだ。 向こうは歩いているにも関わらず、だ。 でも泣き言は言っていられない。 こんな場所に取り残されるなんて、絶対に嫌だ。 「こうなったら、ぶっ倒れるまで追い続けてやる」 足の回転数を早めて、さらにスピードを上げようとする。 だが、その必要は無かった。 ーーズルリ。 突然、地面が消えた。 走ることに集中していたオレは、何ら回避行動を取れない。 「うわあぁぁーーッ!」     
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