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「王様の用意したホテルっていうんだから、もうちょっとゴージャスなところを想像していたのに」
理恵子の素直な文句に、栞もちょっと同意した。
そこは高級リゾートホテルではなく、簡素なエコノミーホテルだった。
「空港の近くであることを優先したのでしょう。リゾートホテルはたいてい海岸沿いで、ここからはだいぶ離れていますから」
チェックインしてみると、壁もシーツも白で統一されていて、とても素敵だった。
たまに出張で泊る日本のビジネスホテルより、設備は新しくモダンなインテリア。
栞は思わずスマートフォンで写真を撮っていると、理恵子が何気なく声を掛けた。
「ところで栞、明日その服で会いに行くの?」
そういえば、Tシャツとコットンのパンツしか持ってきていない。
長時間の移動だから、足元は当然スニーカーだし、メイク道具も色がつくものというより肌を守るものばかりで、しかも最小限しかない。
久しぶりにカイトに会うのに。
慌てる栞を、理恵子は笑った。
「大丈夫、栞。前よりずっと目が輝いていて、すごくきれいになった。メイクなんてしなくても大丈夫だよ」
そう言われて鏡の前に座る。
少し日に焼けて、頬にそばかすが目立つ。
そして目は早くカイトを捉えたくて、その思いで一杯で。
「目、血ばしってますね」
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