第25章

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「そうじゃなくて、別の表現はないの?!」 翌朝の鏡の中の栞。 髪の毛に寝癖はなく、きれいに顔の周りでそろっている。 羽織物になればと持ってきていたコットンの白シャツを、下まできちんとボタンを留めて着る。 袖を2、3回まくる。 日焼け止め重視のクリームにうす付きのグロス。 目元はマスカラだけ。 そして頬はなにもしていなのに、うっすらと赤い。 準備はできた? という夏枝のことばを思い出す。 今から、カイトに会いに行く。 準備はできた? 同じことばを鏡の中の自分に問いかける。 部屋をもう一度振り返って、忘れ物の確認を行い、ホテルの外に出る。 迎えの車は、古い型の日本車。 ここから更に3時間以上の道のりだ。 国の首都機能を持つ高いビル群の立つ中心街を抜けると、あっという間に農村になった。 それから更にしばらく走ると、道路脇の林はどんどん深くなっていき、道も悪くなってきた。 空港までの逃走で車の揺さぶりは経験済だが、それとはまるで違う地面から響くイレギュラーな揺れ。 慣れない道。 慣れない暑さ。 熱が出そうだ。 「栞。車酔いは大丈夫だっけ」 「大丈夫なはずなんですけど、さすがにこう内臓から揺さぶられるというか、経験したことのない揺れなので、気持ち悪くなりそうです」     
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