第25章

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「じゃあ、歌でもうたう?」 「歌? いいえ」 「しりとり」 「結構です」 「じゃあ、王子様とどうやって出会ったの?」 理恵子は気を紛らわせようとしてくれているだが、それに乗じて自分の好奇心と記事のネタを聞き出そうとするのが、少々鬱陶しい。 しかし、もうここで拒否する気力もない栞だった。 「簡単に、ですよ」 「ありがと。残りは王様に直接聞くよ」 やっと深い森を抜けた。 唐突に現れる滑走路。 プロペラ機の脇に立つのは、よく知ったあの人の姿だ。 車が止まると同時に飛び出し、ふらつく脚で駆け寄る。 「喬久さん。ご無事で」 ことばが途切れた。 涙がこぼれそうだった。 つややかな黒い髪。 ジャングルに不似合な黒のスーツ。 いつものように言葉少なく、彼女たちを飛行機に案内した。 「さあ、こちらへ」 それでも、いつもより少しだけ笑顔のように見えた。 乗り込んだ理恵子は栞にささやいた。 「いい男」 「やめてください」 ここからプロペラ機で1時間。 またしても揺れる乗り物。 高度が出ると安定したが、足元が終始不安だった。 理恵子は怖いからと言って、寝てしまっていた。 栞はここまでのことを喬久に話しながら気を紛らわせた。 プロペラ機は長い着陸状態からようやくランディングした。     
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