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着陸後に目を覚ました理恵子を機内に残してタラップに立つ。
日は傾いているが、なんの障害物もなくまっすぐ照り付ける強烈な日差し。
乾いた風に甘い花の香りが混じる。
乱れる髪を抑えながら、周りを見渡す。
先程離陸した場所とは違い、よく整備されたちゃんとした空港のようだっだ。
タラップの先には真っ赤なじゅうたん。
その先には白い車の列が見える。
その前に黒い服を着た人が十数名。
男性も、女性も。
彼らはある人を囲むように円を描いて立っている。
その中心には、白い民族衣装を着たカイトが待っていた。
腕を背に回して、まぶしそうに目を細めて。
風を手でよけながら、栞はタラップを一段一段降りていった。
白いシャツの裾が風ではためき、お腹に風が直接当たる。
最後の一段を降りる。
それから、1歩、2歩、3歩。
目の前にカイトがいる。
栞はカイトを見上げる。
何か言おうと、息を吸った。
けど、声にならず息が詰まった。
「栞」
カイトが優しくささやいた。
「栞、よく来たね」
うるんだ瞳にまつ毛が濃く影を落とす。
頬がこけ、肌がはりを失っている。
口元には、険しいしわが刻まれている。
なにより、いつも自分に向かってまっすぐに差し出された腕は、後ろに回されたまま。
栞は一度息を吐き、再び息を吸った。
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