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「あなたに、会いに来ました」
「うん」
「あなたに会いたくて、ここまで来ました」
カイトは黙ったままだった。
栞は続けた。
「手紙を読みました」
「あれは、捨てたつもりだったのに、喬久がくず入れから取り出して勝手に出したものです。あんな内容をあなたに読ませるつもりではなかった。申し訳ない」
カイトの状態に危機感を持った喬久が、反故にした手紙を勝手に母宛に出したものだったのだ。
「でもあれを読んだから、わたしはここまで来たのです」
滑走路を再び強い風が吹く。
甘い甘い花の香り。
ドラセナプティエ。
王妃の花。
栞の短くなった髪の毛を逆立てさせる。
カイトは目を細め、言った。
「あなたの短くなった髪の毛や、日に焼けた頬をこの手で触れたい。その気持ちに今も変わりはありません。でも今のわたしの手はそんなことができる資格があると思えないのです」
自分の両親を殺したのはエステラの父親。
そして、彼を処刑した。
「後悔、しているのですか」
カイトの口がゆがんだ。
「自分の両親を殺害したのは彼です。彼の死は、こうなるのが決まっていたことです。
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