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取り出したカードを眺めながら思う。自分が選んだ本に、いつも見かける名前が記されていれば「この人、気が合うなぁ」とか「どんな人なのかなぁ」と想像させられるし、何だかおもしろそうだ。同じように思ったのはわたしだけではないのだろう。
この図書室には、現役でカードに名前を書く生徒が一人だけいるのだ。しかも、その生徒のチョイスはわたしの趣味にぴったりで、親近感を覚えずにはいられない。わたしも文通のように「この本もおもしろいです」と書き始めるのは、最早時間の問題だった。
ちなみに、わたしのニックネームは、本名「七緒アキラ」の名前を並び変えて女の子らしくしたもの――キアラだ。自分の名前が嫌いな訳ではないものの、男子に間違われるのにはうんざりしている。せめてニックネームだけは女の子らしくしたかった。
少し日本人離れしている気もするけれど、ニックネームなんてそんなものだろう。今日選んだその本にも、几帳面な文字で書かれた漢字二文字が並んでいた。
時雨。
やっぱりか。しぐれさん――名前の響きからすれば、女子だろうか。わたしが選ぶ本の多くは、この時雨さんが大概先回りして読んでいた。勿論、わたしが先回りして読むこともあるので、時雨さんもわたし――キアラのことを知っているのは間違いない。
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