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ケッテからティーカップを受け取ると、ハデスは一口、口に含んだ。
喉を通すと、ふぅ、と息を吐き、今度は最後まで飲み干した。
「彼はまた、新しい調合を始めたようだね…この紅茶は試作かな」
「あのお客様はハデスのご友人で?」
「ああ。いつも薬草の調合ばかりしているよ」
「親しいのですね」
「100年来……かな?」
「長いのですか?」
「まあね」
ケッテはティーカップを受け取ると、それを持って部屋を出た。
長い階段を降りる途中、ケッテは立ち止まって、壁の大きな肖像画を見上げた。
「ハデス……ここにも名前は書いていないのね」
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