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冥王
少女は死んでなどいなかった。
そこに魔物などいなかった。
そこにいたのは優しい、灰色の目をした―――貴族のような格好の、一人の男だった。
「よく来たね」
低い声。
『優しい目』というのは、飽くまでこちら側の見解であった。
今のこの少女に感情などない。
―――そうやって、育てられてきたからだ。
まして『優しい目』など、向けられたことも無ければ、知りもしなかった。
だから、何も言わなかった。
言葉も、知らなかった。
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