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それから男は、少女が何も応えなくても、話を止めなかった。
「……俺はね、人間達がそうやって送りつけてきた生け贄を俺と同じ世界に住まわせることで、生かしているんだ。まぁ、使用人としてってとこかな。俺と同じ世界っていうのはそうだな……君らが言うとこでの冥界。死者の国。それで俺はそこの王ってわけなんだけど……正直、君の使い道には困ってる」
―――また、【ものあつかい】だ。
―――ずっと、そうだった。
―――だいじょうぶ、いまさらかなしくなんてない。
「君はとりあえず、お風呂入ってきな。それからご飯食べよう。そんなに細かったら死んじゃうよ」
―――しぬ?わたしが?いままでいかされてきたのかもわからないのに?
しんでいたようなものなのに、と、少女は思った。
言われるがままに風呂に入れさせられた。
少女には、目の前にいた男性がどんな人かもわからなかった―――けど。
初めて感じた“ぬくもり”というものは、こんなにも温かいものを与えてくれるのだと、なんとなく思った。
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