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世界が回る。
星々は降り、芽生えた声明は陽に向かって背を伸ばす。
キルコ。
おぼろげな言葉が脳から剥がれて霧散する。
大地は割れ、生命が湧き出ると乾いた肌を潤し、そして焼き尽くす。
きるこ。
大事なものが剥がれそうな。そんな感覚が鼻から額に抜ける。
夜に落ちた光の中で、何処か行き先の分からない流れが意識を運ぶ。
暗い。暗い。暗い中に光が明滅する。
星。
生命。
魂。
そして記憶。
大脳皮質に染み込んだ情報が溶けていく。
やがて光は消え。
感覚が消え。
残るは魂とそれに付随する諸々。
魂以外の全てが消える。
自分の中から自分が消える。
キルコ・コフィンズが消える。
真っ暗な溶解液が意識に染み込んで。
じわり、じわり、と。その中心へ手を伸ばす。
触れれば解ける。
水酸化ナトリウムよりも恐ろしい闇が蓮田壮介の全てを溶かそうと。
輪廻の扉が開きかけた。
――――その瞬間。
『大丈夫だ。俺に任せろ』
光が溢れた。
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