ともにあるく

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「さあ、どうぞ召し上がれ」 飾りのない木の椀に、湯気を立てる粥が注がれる。 旬の野菜と穀物でこしらえた素朴な粥だったが、珪と幸の好物である。 ひとたび飢饉や洪水にでもなれば、この粥も口にすることができない。 二人はその貴重さを佳く知っていた。 何よりこれを囲んで、何でもない日々の話をするのが二人の愉しみであった。 「幸、今日の粥の味もちょうど好きな加減だ。この数日、朝晩が冷えたから木犀が香りだしたよ。あの子たちは季節を佳く知っているね、我先にとその便りを届けてくれる」 「本当に。柔らかでいて身が引き締まるようで。今の冴えた空気にぴったりな香りですね。私も大好きな季節です……あなた、何か言いたいことがあるのでは」 「ふむ。幸は賢すぎるな。まあ言わねばならんことなんだが、まずは粥を全部たいらげてからだ」
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