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やがて私達を乗せた馬車は青の国の巨大な門を出、しばらく走り、森を抜けると、広大な牧草地帯に出た。
バドが御者台から声をかける。
「この辺一体は黄金国の領土です。地面は、ですよ。ほら、ずっと向こうの空を見てください。空に浮かぶ二つの島が見えますか? あれが赤と白の国の領土です」
私は窓から外を見上げた。
空には確かに大きな二つの島が左右に離れて浮かんでいた。左側は赤土と植物で覆われた島、右側は白い大きな建物幾つも立ち並ぶ島のようだ。
「空に浮かぶ島なんて初めて見ましたわ」
ララが窓に食らい付くようにして見ている。
すごい。私は救世主探しを暫し忘れて見入った。あんな大きな島がどうやって浮かんでいるんだろう。
バドが続ける。
「あの真ん中にある大きな雲をはさんで向かって左が、赤の国。右が白の国です。では昨日言いかけた、二つの国についてお話しましょうか。アレクセイが詳しいですね」
馬に乗ったアレクセイは、馬車の隣に馬をゆっくりと進めた。窓越しに私へ話しかける。
「俺は旅好きだから色々話を聞くんだ。まず一つ忠告しておこう。それぞれの国にあんまり滞在しない方がいいぞ。お互いの国の愚痴や文句ばかり言われて嫌になるからな。せいぜい半日だな。それから、赤の国で白の国の事を話さないように。逆も然りだ。奴ら途端に不機嫌になるからな」
「何でそんなに仲が悪いの? 」
「仲が悪いと言ったって、大規模な争いがあったわけでもないし、今もした事はない。犬猿の仲なんだよ、昔から。お互い空に住む種族でありながら文化や物の考え方があまりに違うから、何となく虫が好かない、というのが一番の理由らしいな」
「たったそれだけの理由で!? 」
「それだけの理由が、両国には大きいらしいな。お互い自国にない物を持っているから嫉妬もあると思う。白の国は技術や科学力が優れているが資源が少ない。自然の豊かな赤の国はその逆さ。両国とも足りない物は黄金国に頼ってはいるが、黄金国だって知っての通り大きな国じゃない。自国の面倒も見なきゃいけないからそんなに支援もできないさ。本当は距離も近い隣国同士が手を結ぶのが一番なのにな」
「そうすればいいじゃないか。じゃあさ、僕がお互いの国に命令したら仲良くするかな? 」
セドリックが苦笑した。
「救世主でもきついんじゃないか? マコトはあの王達を知らないから」
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