プロローグ

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にゅっと一匹の大きなドラゴンの姿が窓に映り、馬車の横をゆっくりと飛んで行った。 「あら、マコト、ドラゴンは初めてですの? 」  ララが不思議そうな顔をしている。  バドには事前に聞いていたけれど。私は口をぽかんと開けて空を悠々と飛ぶドラゴンを見ていた。  そうしている間に、赤の国が見えてきた。外から見た通りの、赤土と植物に囲まれた、緑豊かな所だった。バドが手綱をしぼり、ゆっくりと馬車は速度を落として行く。 「マコト、ララ、到着ですよ。ここが赤の国。人語を話すドラゴン達の国です」  馬車がふわりと着地し、一歩外に出ると、頬を伝わる風が熱かった。日差しもじりじりと強い気がする。いきなり夏の季節に来たかと思うほどだ。 「はは、暑いか? そうだな、ここは。でもじきに慣れるさ。この服が自動で温度調節してくれるからな」  アレクセイが私を見て笑った。 「え、そうなんだ!? 」  私は改めて自分の衣装を見下ろした。確かに、どこででも長袖で通してたけど。魔法ってすごいんだなあ。  着地した場所は、赤い石でできた巨大な宮殿の門前だった。怖い顔のドラゴンにバドが用件を告げると、王の間へと案内された。そこへ行く間も、要所要所にいかついドラゴンがいて、私達をぎろりと睨んだ。ひええ。すごい迫力だ。ただでさえ彼らは身長が軽く2mを越え、横幅は4,5mはありそうなのに、さすがドラゴン、顔が怖い。それにしても、ここは青の国と違って、かなり重々しい雰囲気だなあ。
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