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王の間に入ると、赤い絨毯の延長線上に、今まであったうちで、ひときわ立派なドラゴンが、赤い水晶でできているような玉座に座っていた。金や赤い宝石で彩られた立派な首飾りや足輪を身に付けている。額には、大きな三日月形の傷があった。
「赤の国へようこそ。歓迎致す。わしはギルディア、この国の王じゃ」
ドラゴンは、重々しい声で挨拶をすると、傍にいた部下のドラゴン達に命令した。
「大事なお客人じゃ。例え何があっても途中で入室する事を許さぬ。破ったらどうなるか分かっておろうな」
赤く爛々と光る眼でぎろりと睨むと、充分強くて怖そうだったドラゴン達は萎縮し、黙って深く頭をたれ、静かに退出していった。
な、なんか物凄く王らしいと言うか、とっても威厳がある王様だな。全身から迫力を感じる。
部下が全員出て行くのを確認すると、ギルディアは私達に向き直った。
「さて。わしを昔から知っておる者もおると思うが、挨拶代わりに言っておこうかの。救世主が現れたと極秘に聞いたがこのギルディア、わしが認めた者のみにしか忠誠は誓わぬぞ。予言は絶対、その価値は大いに認める。救世主の命令とあらば動きもしよう。しかし心までは縛れぬぞ」
あーあ、また始まった、という顔で、バドとアレクセイはこっそりため息をついた。
「で、新王はどこかな」
こちらです、とバドが私を紹介すると、ギルディアは一瞬目を見開き、ふん、と軽蔑したように鼻を鳴らした。
「これは又、今までの中でも最も小さき王じゃな」
ちょっとむかっと来た。ララが顔を怒りで真っ赤にして一歩踏み出す。
「ギルディア殿は見かけで人を判断しますの!? 」
私はララを制し、ギルディアを見据えた。
「僕は自分が強いかどうかはわからない。でも、これだけは言える。強さは体の大きさでは決まらない! 」
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