プロローグ

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「ほう、言うな」  ぎろりと彼は私を睨んだ。私も、本当は怖かったけど必死でにらみ返した。この異世界の暮らしで実感したんだ。これだけは譲れないんだから!  少しして彼は目をすっと細くし、ふふ、と小さく笑った。 「さて、お忍びとは言え、折角わが国を訪ねてくれたのじゃ。色々見せたいが、滞在がたった半日では半分も見せられぬな。すぐに出掛けようかの。自慢の学校をお見せしよう」  そう言うと、玉座から降りてどしん、どしんと歩き出す。 「何だ、あの態度」  セドリックが眉をしかめる。バドはまあまあ、と私達の肩を叩いた。 「マコト、気にしないで下さいね。彼はいつでもあんな感じですから。ドラゴン族は私達より長命を誇りますから彼等なりのプライドがあるんですよ。特にギルディアは頑固な所も少しありますが、基本的に悪い人ではないんです」 「長命って、どれくらい? 」 「三百年ぐらいでしょうか。ギルディアは二五〇歳くらいだと思いますよ」  さ、三世紀。それじゃあ私なんか超若造だよね。お年寄りは・・敬わなきゃねえ。  王宮の外に出ると、ギルディアは私達全員を、ドラゴンが引っ張る大きな馬車のような乗り物に乗せた。一匹の部下のドラゴンがばさっと飛び上がり、私達を乗せた馬車を軽々と空中に持ち上げる。 「わしらは歩くより飛ぶ方が得意でな。空からいろいろ案内しよう」  そう言ってギルディアも飛び上がり、先頭に立ってゆっくりと羽ばたいた。彼の姿を認めると、空を飛んでいた他のドラゴンや地上にいる物達まで、ははーっとひれ伏した。専制君主と言うか、すごいなあ。  彼は少し飛んで移動し、目的の場所に着くと一旦着地し、大規模な畑の数々、林業の中心となる巨大な森林、宝石を生み出す採掘現場、美しい滝や湖などの大自然まであちこち紹介してくれた。  結構面倒見がいいんじゃない。もしかして、この人、根はいい人なんじゃないのかな。  最後に彼は、一番の自慢と言う子供向けの学校を紹介してくれた。  少し離れた所にある、緑豊かな小島に私達は着陸した。
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