プロローグ

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「白の国へようこそ。わたしは王のクレイ。黄金国の王の訪問はわが国の誇りである」  肩まである流れる銀髪と端正な顔立ちを持つ彼は、無表情で静かにそう言った。こちらが救世主、マコト殿です、とバドが私を紹介した時も、ちょっと眉を動かしただけで、ほとんど表情は変わらない。何か、やりにくそうな人だなあ。  クレイは淡々と続けた。 「今回はお忍びとか。他の国にはもう行かれたか。青の国は。・・そうか。あそこは小さいが美しい国だ。・・・で。赤の国は」  私が頷くと、彼はたちまち眉間に皺を寄せた。 「赤の国の王が何か言っていなかったか。実力主義だとか何とか。下克上の野蛮な国の意見など聞かれぬ事が賢明だ。王位は継承される物とは言え、我々はそれに甘んじている訳ではない。幼い頃から学業は勿論、人格も最高であるよう誰よりも厳しくしつけられている」  うわー、凄く怖い顔をして。やっぱり赤の国と仲が悪いんだなあ。 「クレイ殿も勉強家と聞きました」  険悪な雰囲気を消そうと、慌ててバドが言った。クレイの眉間の皺が少し和らぐ。 「ああ。この国はまず学習ありき、だからな。何事もしっかり自ら考え判断する力をつけねば大人になってから苦労する事になる。男女問わず勉学に励む者には投資を惜しまない。たとえ勉強の苦手な者がいても充実した学校のカリキュラム、一流の講師陣、きめ細かい精神的なサポートで支援する。わが国民は皆勉強家で知られている。結果、一流の技術力も身に付ける。技術力は社会で生きて行く大きな武器だ」  ふうん、なるほどね。私は成績中ぐらいで、何で勉強しなきゃいけないのって思うときがあるけれど、学校や勉強で身に付ける物は、単に知識だけじゃなくて、もっと大切な物もあるんだなあ・・。  私が真面目に頷いていると、クレイは少し目を細めた。 「今回の滞在は短いそうだな。私も失礼だが時間がない為、簡単にわが国を見ていただこう」
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