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恭子さんとは、美奈を通じて子供の頃からお世話になっている。そんな自分にでも、出来ることがあるのならしてあげたいと心から思うし、それに恭子さんの件で俺が暗くなって美奈の負担になるわけにはいかない。
「それじゃ、バイトいきましょうか」
「おう!」
俺達は午後6時からバイトがある為、早めにお見舞いを終わらせバイト先へ向かう。病院を出る頃には日は落ち暗くなってきていたが、病室を出た時よりは二人は笑顔を取り戻して明るくなりはじめていた。
「柊、いつもごめんね。どうも私一人でお見舞いに行くと暗くなっちゃっていけないわ」
「そんなの気にするなって! 俺なんてついていっただけで何にもしてないし」
美奈はよく学校帰りに一人で恭子さんのお見舞いに行っているが、最近美奈の元気がないように見えて放っておけず、今回俺は付き添いを申し出た。結局何もしてやれずじまいで残念ではあったが。
「ううん。柊はそうやっていつも明るくいてくれるだけでいいの。それにお母さんだって、私が一人ぼっちじゃないって安心してくれると思うし」
「そうか。それなら俺もついてきたかいがあったかな」
「ふふ、そうね」
「お、やっと笑った」
俺は幼馴染である美奈に笑顔が戻ったことに安堵した。そうこう話している内にアルバイト先のDVDショップ<GEGESAGO>に到着する。
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