168人が本棚に入れています
本棚に追加
俺のロッカーから、いやらしい描写が表紙になっている薄い本が数冊床に落ちた。その光景を目の当たりにした美奈の軽蔑の眼差しが、更に強くなる。
「あ、いや、これはその……」
何と言ってごまかそうかと考えるが、言葉が出ない。同じく現場に居合わせた店長も、何も知らない見ていない風な顔をして、全く俺を助けようとはしてくれない。
「変態。当分私の傍に近寄らないでちょうだい」
美奈は無表情で俺に変態と言い捨てた後、さっさと自分のエプロンを着てフロアに出てしまった。不運にもバイト開始からいきなり美奈に軽蔑された俺は、ロッカーに爆弾を仕込んだ犯人に向かって掴み掛かる。
「店長! なんで俺のロッカーにこんなものが入っているんですか!」
こんなブツを持っていて人のロッカーに入れる人物は、どう考えてもこの店には店長しかいなかった。
「なんでってお前がどうしても見たいからと、忘れないようにロッカーに入れておいてくれと頼んだもんだからそこに入れたんじゃないか」
そういえばそうだったかもしれない。しかし、一度掴み掛かってしまったほどのこの気持ちの昂りは、簡単には治まらない。
「入れるにしてももうちょっと考えて入れて下さいよ! こんなの、小学生がドアに挟む黒板消しのようなもんじゃないですか!」
「そういうことは、もうちょっとロッカーの中を綺麗にしてからいうんだな」
最初のコメントを投稿しよう!