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相変わらず野太い俺の声で呟いた妻が、ようやく事態を察してパニクリ始めたようだ。
まるでアニメ番組の声優を入れ替えてアフレコしているような馬鹿馬鹿しい展開だが、当事者の俺達夫婦にとっては想像を絶する大事件だった。
その時。昨日三歳の誕生日を迎えたばかりの愛娘がベッドの真ん中で目を覚ました。
「パパ……。ママ……。おはよー」
「お、お、お早う。リコ」
「リ、リコちゃん。ま、まだ寝ててもイイのよ?」
当然今のセリフは夫婦逆の口から発している。
「ううん。リコ、もう起きりゅの。三しゃいになったから早起きするんだお」
「そ、そうか」
「リコは、お利口ね」
「パパ……。ママ……。どうかしたにょ?」
舌足らずな口調の愛娘が愛くるしい瞳で俺達夫婦を見つめ返してきた。
子供ならではの純粋な心が、何やらいつもと違う雰囲気を敏感に感じ取ったのか。
「べ、別にどうもしないさ。なあ、真由美?」
「え? ええ、そうよ。別に何ともないわよ。ねえ、浩介?」
「そうかにゃあ?」
「そうさ。パパとママはいつもどおりだよ。ただ……ちょっと心が入れ替わったっていうか……アハハハ」
「そ、そうなのよ。身体がすり替わったっていうか……うふふふ」
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