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ステージから数メートルの距離まで辿り着いたところで、お互いに自然と足を止めた。
シクヤンはあくまでも前座だから、然程多くの人が詰め掛けるような事態には至らないだろうが、鑑賞位置の了解を得るよりも、このまま途切れさせずもっと話していたい衝動に駆られた。
YOHさんも場所を気に掛ける素振りはないと踏んで、電車の話題からある予定を思い起こし、投げ掛けてみる。
「……アルバムに“夜の電車、夜の音”って曲ありますよね。今日、それ聴きながら帰るの楽しみなんです」
「あぁ、それ良いっすね! 俺もそうしよ」
「!」
迷いなく乗って来てくれたことに、心臓が跳ね上がってしまった。
予期せずも速まる鼓動の訳がわからず、頬から首にかけて手を充てがうと何やら熱っぽさを感じる。
開演前から既に熱中症が疑われるのだろうか。
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